言葉はいつも想いに足りない

~きおくのきろく~

 吉澤さんが軽くはない程度の怪我をしていたということを先ほど知りました。
 まったく胸が痛くなることはなかった。どうやら本当に呪縛は解けてしまったようだ。お別れして1年と5ヶ月。まさかこんな日が来るとは思ってもみなかった。吉澤さんへの想いは一生背負っていくものだと思っていた。


 痛まない胸。


 本当なのだろうか?
自分の体が自分のものではない感じがする。ちょっと前まであんなに苦しかったのに。運動会の60メートル走で失速する吉澤さん、あのときは心臓が張り裂けそうになったのに。


 これでよかったのだろうか?
きっとこの質問はこれからもずっと繰り返し問いかけるだろう。でも当時あのまま続けていくという選択肢は選びようがなかったのだからこれでよかったのだ、と今は思う。


 吉澤さんへの想い、なくしてしまってよかったのだろうか?
これでよかったんだよって声は、僕の中から聞こえてこない。