言葉はいつも想いに足りない

~きおくのきろく~

 朝起きて、尿たれにトイレへ。
いつもとは違う色の尿が出る。茶色みがかっている。ま、花粉症の薬飲んでるせいだろ、くらいに思ってそのときは気にも留めず。
正午過ぎ、今日2度目の尿たれ。明らかに普通とは違う。黄色ではなく茶色っぽく、出終わり頃になるとその茶は更に濃い茶色の尿になる。明らかに尿に何か混じっている。血尿だ!


 血て…ただ事じゃない…俺…死ぬのか…。 さまざまな思いが頭を駆け巡る。


 症状としては、血尿のようなものが出るだけで、痛みは何もない。至って健康そのもの。


 血尿といえば、今から7〜8年くらい前に尿管結石を患ったことがある。あれの痛みは半端ではない。まさに七転八倒だった。その時は血尿はなかったものの、尿管結石に血尿は付き物らしい。


 間もなくあの痛みがカムバックするのか…


 怖くなったので、職を早めに切り上げ、職場近くの町医者(泌尿器科)へ行く。等々力診療所。老医師がひとり。
 「血尿が出た」と告げると「これに尿とってきて」と紙コップ。尿を取り、渡すと試験紙でチェックをする。「おぉ、これは血だ。まさしく血です」など言われ「この部分が青くなると血が含まれてるってことです。ほら、ここに書いてあるでしょ」と試験紙の説明が書かれている容器を見せられる。黄色から青色に変わるそうのだが、青が濃ければ濃いほど「まさしく血」なのだと。使った試験紙はどう転んでも青い。黄色ではなく水色でもなく、濃い青をしている。


 血尿確定…


 診察台に仰向けになり、おちんちんと玉を軽くチェックされ(いやん♪)、膀胱・腎臓あたりを押して「痛いところはない?」と聞かれるが、痛みはまったくなし。「う〜ん」と唸る老医師。「紹介状書きますので、大きなとこで検査してもらってください」


 検査?


 「どこかに痛みがあれば結石の可能性もあるんだけど、痛みがないっていうのは、う〜ん。何か出来物、腫瘍とか・・・」


 しゅよう?


 「膀胱癌の可能性もあるし」


 ぼうこうがん?
癌?それってやばいじゃん。石じゃないの?え?石ならほら痛いときは痛いけど石出ちゃえばノープロだし。え?癌て?


 「実はわたしも膀胱癌で、来週に手術をするんです。わたしの場合も血尿出て、でも痛みは何もないしって検査したら癌が見つかって、来週手術するんですよ。それに症状がよく似てるからね、検査した方がいいかと」


 …


 のっぴきならないことになった。
明後日、昭和大学病院まで調べに行くことに。



 どうなのかな。
癌かもか。
手術すれば治るのかな。
入院か、ひさしぶりだな。
入院…看護婦さん…。
本をたくさん持っていこう。
仕事忘れてゆっくりもできるな。
看護婦さんか…。
入院…悪くないかもしれない…。



 死ぬかもしれない。すぐではないにしても「先」の分かっている人生になるのかもしれない。う〜ん、それはそれでありなのかな。今はあまり怖くはない。仏教かじっておいてよかった。人はいつか死ぬんです。死にたくはないけどね。



 とりあえずは明後日の検査の結果しだい。


 ここが闘病日記になりませんように。